奥沢の風景
 奥沢2丁目 榎本 敦子 

第48回 2012.8.9

 奥沢で生まれた私ですが、結婚してから10年ほど、北の地方に住んでいました。また奥沢で暮らすことになり感じたのは、四季折々の街中のそこここに咲く花や緑の多いこと、特に桜の美しさ、秋から冬の季節の移り変わりの美しさ。

 私が住んでいた土地では、桜は名所に観に行くもので、家の周りや街中どこででも見られるものではありませんでした。思えば、学生の頃も桜はそこにあり、当時はアメリカシロヒトリという黒い毛虫が大量発生して、声にならない悲鳴をあげながら、一歩一歩踏まないように歩を進めていました。今は平和に見上げられます。

 北の地の秋は短く、雪虫が飛ぶと駆け足で冬が来るので、秋は気分の沈む季節でしたが、奥沢に帰ってきたら、キンモクセイの香り、徐々に色づき落葉していく桜やイチョウや花みずき・・・季節を感じる街歩きは、秋の魅力を再認識させてくれました。

 また、最近、姪っ子が踏切の音に驚いたので気づいたのですが、あちこちで私鉄の地下化高架化が進んでいる中で、奥沢には地上を電車が走っています。田園調布駅から奥沢駅にかけてカーブを電車が上ってくるのは、「鉄道ファン」じゃなくても見飽きない光景です。我が家は東急3線の作る三角形の真ん中辺りにあるので、神社の前からは、運がよければ3線同時に見られます。そんな景色は今はあまりないと思います。小さい頃は、踏切のおじさんがいたり、ストライキがあると学校帰りによく線路を歩いたりしたものです。今では有り得ないことですね。

 昔と変わらず、奥沢駅から田園調布駅方面に向かう線路からも富士山が見えます。でも、昔より雪を頂くのが少ないと感じませんか。  

 最後に一つ、最近の奥沢からは、自由が丘と同じように、スカイツリーと東京タワーがちょうど同じ高さに見えます。ちょっと高いところから見てみてください。地球は丸い。