奥沢住人になって
 奥沢2丁目 新田 美枝子

第10号 2002.12.17

 奥沢に移り住んで12年目の冬を迎えます。当時、自然の多い千葉に住んでおりましたが二人とも、職場が東京でしたので何の不安もありませんでした。越してすぐ右も左も分からず道行く人に尋ねながら、4才・1才の娘を自転車に乗せ、あっちの神社、こっちの公園と梯子をして一日を過ごした日が昨日の様に思い出されます。美しい桜並木の緑道、夏の陽射しを遮ってくれる椎の大樹のある神社、銀杏がたわわに実るイチョウのある寺と、季節を感じながら走ったものです。

 奥沢にも慣れ、下の子が小学校に入ると同時に犬を飼いました。毎日2回散歩をするのですが、いつの間にか私の仕事になってしまいました。2丁目しか知らなかった私の行動範囲も広がり奥沢はもちろんのこと、緑が丘・中根・都立大迄足を延ばす事となりました。地理も詳しくなりましたが、人との出逢い、新築工事の様子、季節の移り変わり等、毎日小さな発見があります。

 路地を入るとどのお宅にも庭木があり、花・植木鉢が並び、垣根も手入れがしてあります。なんだか急に殺風景な我が家の庭が可哀相になってきました。不揃いの樹木、雑草だらけの庭が気になり、草抜き等を始めたのですが自分だけでは手に負えず困っていた時、杉村さんに紹介して頂いて植木屋さんに毎年お願いするようになりました。お陰様で今ではキンモクセイとモミジが家を守るかのように大きく構えて落ち着きある庭になりました。植物の好きだった父母が残してくれた庭木達を枯らすことの無い様守っていくのも私の仕事なのかなと思います。この静かな緑豊かな奥沢の街並みを今日も愛犬バロンと歩きます。天迄届きそうなケヤキの下を後ろに反り返りながら下ります。この冬それぞれのお宅ではどんな花を咲かせてくれるのか楽しみです。きっと来年もこの道をバロンと歩いています。やっと奥沢住人になれたようです。