緑の工夫に感謝
 奥沢2丁目 細野 千恵子

第13号 2003.10.12

  落ち着いた佇まいのこの街が好きになって、私達が奥沢に住み始めてからもう早いもので23 年程経ちます。今の二丁目の家は、9年余り前に縁あって黒井さんよりお借りしているものです。引越してきて一週間が過ぎた頃、2月の始めに思いがけず大雪が降りまぶしい雪景色になりました。丸く剪定されたドウダンツツジが白い帽子をかぶり、庭の真ん中にちょこんと可愛く立っ ていましたっけ。その年の春には私の好きな紫色のかれんなスミレ草が庭一面に咲きほころび、私達を歓迎してくれているかのようで嬉しかったものです。通りからは見えないのですが他にイチョウやシュロ、椎、モミ、ツツジなどが植えられていまして、春から秋にはボケ、水仙、シャガ、シラー、すずらん、山吹、ノカンゾウ、タマスダレ、山百合、アーカンサス、ミズヒキ草、ホトトギスなどの花が咲いて楽しませてくれます。

  ここ奥沢の街は工夫を凝らした生け垣や庭の樹木を大切にされているお宅が多く、又四季折々の草花を楽しまれる方も多いので、鳥達ばかりでなく街を歩く私達の目も大いに楽しませてもらい、その恩恵をいっぱいに受けています。いつかは梅のいい香りに誘われて黒井さんのお庭にはうぐいすがやってきて、早朝に“ホーホケキョ”と聞こえた時は私の耳を疑ったものです。 又、どこからくるのか金木犀のいい匂いで目覚めた朝は、一日心が浮き浮きしてしまいます。カラスが増えたせいか鳥の種類も前よりは少なくなりましたが、時々は庭に番いで姿を現わし私達を愉快な気分にさせてくれます。

  街も時代と共に変わっていきますが、ご近所で大きな木が切り倒された時はとても残念で寂しい気がしました。けれども「土とみどりを守る会」の集いに参加させていただいた時のこと、私達がホッとする空間をかもし出す桜や欅の大木をお持ちの方のご苦労を知り、緑の環境を維持する事の難しさを思い知らされた気がいたしました。それぞれのお宅の緑の工夫に感謝したいと思います。