少年時代の思い出
 吉田 昌弘

第8号 2002.5.29

 私は奥沢で生まれて、早や60年の歳月が経ちました。私が少年の頃、奥沢の町は静かで実にのんびりとした雰囲気の町でした。現在のバス通りも、バスが通る以前は牛や馬が荷車を引いてのんびりと闊歩していました。近所のお婆さんから聞いた話ですが、昭和10年頃には森田屋酒店(奥沢2丁目)の近くに銭湯(おふろ屋さん)が一軒あったそうです。そのお婆さんは若い頃、暗い夜道を提燈を下げて銭湯に通ったそうです。今では想像もできません。

 私が小学生の頃、サーカスがやって来て、弁天通り(現在の奥沢銀座通り)にサーカス小屋のテントを立てて興行をしたことがありました。私も数人の友だちと観に行ったのですが、空中ブランコなどハラハラする曲芸があったのを今でも鮮明に覚えています。夏には我が家の庭にもトンボが沢山飛んで来て、初秋の麦畑には(当時は麦畑がたくさんありました)赤トンボが群れをなして飛んでいきました。青空には数羽のトンビがゆったりと輪をかいて飛んでいました。夕焼けで美しくオレンジ色に染まった秋空の中を悠然と飛んでいた数羽のトンビのことが今でも懐かしく思い出されます。

 やはり私が小学生の頃、友だち数人と奥沢神社の境内の樹に登って、神主さんに見つかって叱られたことなど、50年以上経った今でも昨日の事のように思い出されます。

おくさわの 風に吹かれて 気がつけば 還暦すぎて 昔なつかし