おくさわ今と昔『今』

奥沢住人になって
 奥沢2丁目 新田 美枝子

第10号 2002.12.17  奥沢に移り住んで12年目の冬を迎えます。当時、自然の多い千葉に住んでおりましたが二人とも、職場が東京でしたので何の不安もありませんでした。越してすぐ右も左も分からず道行く人に尋ねながら、4才・1才の娘を自転車に乗せ、あっちの神社、こっちの公園と梯子をして一日を過ごした日が昨日の様に思い出されます。美しい桜並木の緑道、夏の陽射しを遮ってくれる椎の大樹のある神社、銀杏がたわわに実るイチョウのある寺と、季節を感じながら走ったものです。  奥沢にも慣れ、下の子が小学校に入ると同時に犬を飼いました。毎日2回散歩をするのですが、いつの間にか私の仕事になってしまいました。2丁目しか知らなかった私の行動範囲も広がり奥沢はもちろんのこと、緑が丘・中根・都立大迄足を延ばす事となりました。地理も詳しくなりましたが、人との出逢い、新築工事の様子、季節の移り変わり等、毎日小さな発見…

3月のある日
 奥沢2丁目 古田中 みどり

第11号 2003.3.31  朝、9時。やっと、家族がみんなバタバタっと出かけて行った。きょうもよく晴れて、このシーツを二枚干し終わったら、犬と散歩に行こうかな。ベランダで洗濯物を干していると、どこかで植木屋さんの話し声。ハサミのチョキチョキ。うぐいすのホーホケキョが聞こえる。空気はゆったりとして、あまり動こうとはしない。ずっと遠くで、ヘリコプターの音がしている。空はどこまでも広がっていて、風はかすかな沈丁花の匂いを、どこからか運んでくる。私はいい気分になって、お気に入りのCDをかけ、コーヒーをいれて、もうすっかり犬の散歩のことは忘れてしまっている。娘の食べ残した、パンケーキのかけらを口に放り込み、コーヒーを飲む。さぁて、掃除機でもかけるかぁ、ってな具合で朝の作業は遅々として進まない。私はそれを、この辺りの空気のせいだと思うことにする。CDが一枚を終わる頃、犬の視線を感じ、そうだそうだ、…

柳と共に
 奥沢2丁目 菅井 雅子

第12号 2003.6.22  この地に移り住んで十年が過ぎ、やっと奥沢やまわりの町並が分かるようになりました。新居で迎えたお正月、玄関を飾ろうと小さな花瓶に松、菊、金や銀でお化粧された柳の小枝を生けました。その後花は枯れてしまい、水だけを取り替えていました。半月くらいしてもう捨てようかと思い、花瓶から抜いて見ると芽が出ていました。急にいとおしくなり「早く新しい土地になれる記念になる」と思い、庭の片すみに植えました。  実は、柳の枝がこんなに早く成長するとは知りませんでした。切ってもすぐに、青々とした葉が出てきます。二年ほど前の冬、大きくなりすぎたので幹だけ残して枝を全部切ってしまい、後になって枯れてしまうかと心配しましたが、春には元気一杯枝がはり、すぐに噴水のように四方八方おいしげってきました。本当は、公園の池のほとりに大きくたれさがる柳のようにしたいのですが、小さな我が家ではそういう訳…

緑の工夫に感謝
 奥沢2丁目 細野 千恵子

第13号 2003.10.12   落ち着いた佇まいのこの街が好きになって、私達が奥沢に住み始めてからもう早いもので23 年程経ちます。今の二丁目の家は、9年余り前に縁あって黒井さんよりお借りしているものです。引越してきて一週間が過ぎた頃、2月の始めに思いがけず大雪が降りまぶしい雪景色になりました。丸く剪定されたドウダンツツジが白い帽子をかぶり、庭の真ん中にちょこんと可愛く立っ ていましたっけ。その年の春には私の好きな紫色のかれんなスミレ草が庭一面に咲きほころび、私達を歓迎してくれているかのようで嬉しかったものです。通りからは見えないのですが他にイチョウやシュロ、椎、モミ、ツツジなどが植えられていまして、春から秋にはボケ、水仙、シャガ、シラー、すずらん、山吹、ノカンゾウ、タマスダレ、山百合、アーカンサス、ミズヒキ草、ホトトギスなどの花が咲いて楽しませてくれます。   こ…